平成14年(2002)1月15日
里山の自然と人々の暮らし 2,002・1・15 P5資料
1.昔の里山………一年を通じて生活に役立つ
里山の一年を、季節をおって見ていきましょう。
まず春。冬の間に落ちた枯葉をかき集め、農家の人たちが堆肥を作ります。
それを田畑に入れ、土づくりをします。山ではフクジュソウやカタクリが咲き、
やがて、ワラビやゼンマイなどの山菜採りの季節になります。
田んぼの水溜りではカエルが卵を産み付けます。
初夏には、田んぼに水をはり、苗を植えます。
用水路からメダガが田んぼに入り、卵を産み始めます。
孵化して成長すると、水路をたどって小川に戻っていきます。
昔は耕作や運搬には、牛や馬を使っていました。
刈った草を踏ませて、糞尿と混ぜ、これも肥料にします。
森の木々にはカブトムシやクワガタなどの昆虫が群がり、樹液を吸っています。
秋には、畑では野菜が育ち、田んぼでは稲が穂をたれます。
秋雨の降るころ、山にはいろんなキノコが生え、栗や柿も実をつけます。
やがて木々の葉は紅や黄に染まり、私たちの目を楽しませてくれます。
収穫が終わり、冬が近づくと雑木林での作業が中心になります。
木を切って乾かし、薪にしたり、焼いて炭にしたりします。
食べ物を料理する時や、暖房の燃料にするためです。
切られた木には、やがて芽が出て、20~30年たつとまた大きく育ちます。
2.現在の里山………生活も大きく変わりつながりも薄れた
この50年、里山には大きな変化が起きました。
まず、太平洋戦争で日本は都市を中心に焼け野原となりました。
そこで、戦後の1950年代から60年代にかけ、家を建てる木材を生産するため、
コナラやクヌギなどの雑木林がスギやヒノキの林に変えられていきました。
また、60年頃になると、雑木林の樹木を使って人々が作る薪や炭に
、石油やガス、電気がとって代わるようになりました。
化学工業も発達し、堆肥に代わる化学肥料を大量に作り出すようになりました。
こうして人びとの生活は、里山から離れ、
落ち葉かきといった里山の手入れをしなくなったのです。
春先にピンクの花をつけるカタクリは、
春になっても落ち葉の積もっている林の中では、芽を出せません。
樹木の下草刈りがされていないとササが生い茂り、
スミレなど小さな春植物たちは光がえられず消えていくことになりました。
エネルギーが石油やガスに代わったころ、お米などを安定して作るために、
田んぼの整備が進みました。
機械化に合わせて四角に区切り、用水路は深くして、
コンクリートで固め、管理しやすくしました。
田んぼと水路に段差ができ、
メダカは産卵や成長に合わせ、水路と田んぼを行き来できなくなりました。
農薬も田畑でいきていた虫や魚たちを追い詰めました。
メダカは99年、絶滅が心配される魚のリストに加えられました。
里山の雑木林と田畑のつながりが切られてしまいました。
スギやヒノキに変わった林も、
安い外国の木材の輸入で売れなくなり、荒れ初めています。
3.里山を守ろう………全国各地で運動が広がる
里山を守ろうといゆう動きがいろんな形で始まっています。
①2005年愛知万博の会場予定地に里山が含まれていました。
瀬戸市にある『海上の森』(540hr)です。
施設を作るために貴重な自然が破壊される、
と自然保護団体の人達などが反対し、計画が縮小されました。
②埼玉県所沢市の狭山丘陵には『トトロの森』(約40hr)があります。
狭山丘陵は1960年台頃から宅地や工業用地などに開発され、
里山が消えていきました。
豊かな自然に気づいた人たちが、90年に土地の買取り運動を全国に呼びかけると、
2年間で1億1千万円集まり、91年から雑木林を買い取りはじめました。
98年には「トトロのふるさと財団」が出来ました。
③日本自然保護協会は「里山の自然しらべ」をしています。
1999年に1535件の里山を調べ、このうち約三分の一(538件)で、
里山に悪い影響を与える開発や土地利用が「ある」という結果がでた。
④「里地ネットワーク」都市と結びつけて里地を守ろう。
会社や市町村などと手をつなぎ、炭焼きや農業体験などができ、
虫取りおじいさん、おばあさんに話を聞く里山探検のども企画している。
④大阪府では
大阪府環境農林水産部 緑整備室 緑推進課 自然公園グループ
「紀泉ふれあい自然塾」
鳥の声、虫の音、動物たちの息づかい、めぐる季節を告げる木ぎの姿
・・・ほんの少し前まで、自然は私たちのすぐ身近にあり、
人はこの自然の営みの中で自然と共に生活してきました。
自然と共に生る里山の生活。そんな暮らしを体験できる場所です。
・ボランティア団体
(社)大阪自然環境保全協会 里山管理養成講座など
(財)大阪みどりのトラスト協会 「紀泉ふれあい自然塾」
(社)緑の地球ネットワーク 中国:黄土高原の植林
(社)アジヤ協会アジヤ友の会 アジヤ地域での井戸掘り、植林
4.里山の保全と活用に関する活動
里山はエネルギー源や農村構造の変化などで使われなくなり放置されました。
しかし、現在では防災、水源、レクリエーションなど都市の機能にとって
必要不可欠であるばかりでなく、多様な生物の棲息地としても重要である。
大阪のボランティア団体は全国に先駆けて「里山の保全と新しい活用」を提唱し、
その指導者の養成と市民ボランティアの育成に取り組んだ。(1983年)
この提案は自然保護運動における新しい展開として、あるいは青少年の自然体験、
自然学習の場や、日本の伝統文化、伝統技術の継承、
高齢化社会における健康維持、増進や生きがい活動の場などとして、
全国的な広がりを見せている。
我々の目標は、わが国の伝統的な農業手法による自然環境保全システムに取り組み、
「人と自然の共生」をねらいとしている。
また21世紀における「持続可能な社会」を形成することを目的としている。
この活動は、わが国から発信する数少ない環境保全活動として、
国際的にも注目されています。
5.本当の豊かさは何だろう?
・健康であること
・家族関係が円満である
・生きがいのある生活(将来に希望が持てる)
・高齢化社会にあっても元気な高齢者の社会活動が可能
・市民が自由に社会活動できる環境
・地域での連携が密である
・緑が豊かであること、野生動物が身近にたくさんいる


